マーメイド　-人魚姫の恋-　［後記］

お疲れさまです。如何でしたでしょうか。
気が付けば時間的にも枚数的にも、今までで一番の大長編小説となりました。
自分でもビックリです。
って、なんかこういうコメント以前にも書いた気がする……。

先日、友人とも話したのですが、漫画家でも小説家でも、何故か後期の作品の方が、断然長編が多いような気がします。
その理由が今回分かったような気がしました。

やっぱり、書き始めた最初って、言いたいことだけを直線的に書くことが多いのかな？　と。
端的に、というか、そのものずばりっていうか。
余計な枝葉を考えることが出来ない。
でも、後になると、根幹は同じであっても、それに付随して書いておかなきゃいけないことが増えてくる。
というか、それだけ余裕が出来てくる。
同じ目的地へ向かう為の道でも、ただ、がむしゃらに走るだけではなく、まわりの景色を見る事を覚える。

それを無駄な道草ととるか、必要な物ととるかは、人それぞれですが。
かく言う私も、小説や漫画を読んで、初期の作品の方がダントツに好きな作家さんもいますし、逆に今の作品の方が好みの作家さんもいます。
自分の作品は……どうなのかなぁぁぁ……？
でも、まあ、自分の事にして置き換えると、やっぱり初期作品は青い（笑）んで、恥ずかしいですね。
あまりにも初期のものは、途中で改訂なんぞして無駄な抵抗もしましたし（笑）。
ただ、やはり自分の生み出した作品達は、やっぱりどれもこれも可愛いです。

で、今回の作品。
以前にもどこかで書いたかもしれませんが、この作品、書き始めた当初は「目指せ軽いノリのライトノベル」でした。
他ジャンル作品ですが、Ｃ翼の「天晴れ」のような。
皆で大騒ぎして、楽しい夏休みを謳歌してっていう感じの。
だから、聖さんの存在も、もっと軽い関わりのみであったはずでございました。

なのに、思っていたより、聖さんが真剣で。
書き進めて行くたびに、軌道修正が出来ないと諦めざるを得ない程に、聖さんが真剣でした。
そして、それに引きずられるように伸まで、思いがけず揺れまくってくれまして。
おかげで遼には悪いことをしました。

本当に、連載開始当初は、まさか遼をあんなふうに泣かせることになるなんて思ってもみませんでした。
先のことは分からないとは良く言ったもので。
でも、今回のことで、遼は更にいい男に近づいてくれたのだと思いたいです。

……と、ここまでの後記は、実は随分前に書いておりました。
本当はこれだけでＵＰする予定だったのですが、先日あまりにもショックなことがあったので、この場を借りてちょっと語ってしまいます。
ご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが、先日、小説家の栗本薫先生がお亡くなりになりました。
まだ、全然お若かったのに。
グインサーガだって未完だったのに。魔界水滸伝だって、夢幻戦記だって、まだ終わってなかったのに……
もっともっともっと、栗本さんの作品を読み続けていたいと思っていたのに。
本当にショックでショックで。

確か、初めて読んだのは「魔界水滸伝」でした。
夢中になって読んで、クトゥルー神話にも興味を持って、色々文献をあさってみたりして。
そして、大大大好きな作品は「今西良シリーズ 」。中でも「翼あるもの（下）」は何度も繰り返し読みました。
何故下巻限定なのかって言いますと、読まれた方は分かるかと思いますが、この作品。上巻は良側のストーリー。そして、下巻は森田透という少年側のストーリーとなっており、私はこの透にかーなーりー惚れ込んでおりましたので（笑）。
ほとんど図書館で借りて読むくらいしかしなかった貧乏学生の頃、初めて「買いたい」衝動に駆られて、小説（しかもハードカバー）を買ったのも、栗本作品が最初だったような気がします。
なんか、子供の頃からずーっと読んでいると、その方って自分にとって永遠のような気がするんですよね。
ずーっとずーっと、私が死ぬまでずーっと書き続けてもらえるのが当たり前みたいな？
そんなことあり得ないのだと、ようやく思い出しました。
漫画家の三原順先生がお亡くなりになった時に気付いたはずなのに、また忘れてしまっていたようです。

栗本先生は、私にとって憧れであり心の師匠でした。
私が文章を書きたいと思い始めたのも、栗本先生の小説を読んで感動したから。
つまり、先生の小説と出逢ってなければ、FARADONは誕生していなかったのです。

本当に本当に本当に大好きでした。
心からご冥福をお祈り申し上げます。

そして、ここまで読んで（つきあって）くださった皆様。有り難うございました。

ではでは。
少しずつ、少しずつ成長していく彼等の夏を振り返りつつ、一緒に「人魚姫」を見守っていきましょう。

ＦＡＲＡＤＯＮ　記